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ちょっとお堅い話です。


東京高裁が「設計監理契約は請負契約である」との判断。


この裁判自体は、ある設計事務所が建物を設計したら当初予定の2倍近くの見積りになってしまった。お施主さんは設計契約を破棄し、先に払っていた設計料を「全額」返還するよう求めた、というものです。高裁の判決は原告勝訴。被告は最高裁に上告したものの棄却されたそうです。一般的には何のニュースにもなりませんが、これは一大事です。我々設計者にとっては正に死活問題です。


従来は設計監理契約は「準委任契約」とみなされてきました。そのため計画が途中で頓挫しても、そこまでの成功報酬は認められました。しかし「請負契約」は依頼物の完成によって成立します。途中で計画が頓挫した場合、報酬を受け取ることはできません。


「準委任契約」として代表的なものには、病気の治療を依頼する契約があります。例えば病気になって病院にかかる。しかしその病院では全然症状が改善せず、他の病院をあたることにした。もしもその病院がヤブ医者だったとしても、治療費を全額返せ、ということにはなりません。それは医師に治療を依頼する、という行為が「業務の実施を受任者を信頼して委託する契約」だからです。本来自分でするはずの「治療行為」を、その道の専門家に任せたほうがよさそうだから委任する、という状態です。任せて業務に当たらせること自体が報酬の対象となるので、もし治療がうまくいかず患者が亡くなっ ても、特別なミスがなければ治療費は当然の如く請求されます。


一方、「請負契約」として有名なものは、建設会社と建て主との工事 請負契約があります。請負契約では、あらかじめこれだけの金額で、期間で、これだけのものをつくります、という取り決めがあって成り立ちます。従ってそれに違反すれば債務不履行になり、損害賠償を請求できます。


建築における設計監理契約をこの請負契約に嵌めてしまおう、という考え方がそもそも無理がありすぎます。ハウスメーカーや建売など、すでに作るものが確定している場合(認定型式)、そして設計者と施工者が一体となっている場合であれば、ある程度何をどれだけの金額・期間でつくるか、まで事前に含めた設計契約が可能でしょう。しかし我々が行っているような、きめ細かい建築設計ではそういうことは不可能です。それぞれのケースに応じてできる限りベストと思われる選択をその都度行い、最終的に一つの建築にまとめ上げます。作るものは、はじまりの契約の時点では決まっていません。


むしろ、設計者を「信頼」するから、いいものをつくって下さいな、という「委任」があってはじめて我々はお施主様の代理として役所や数々の業者と折衝に勤しむことができるのです。お施主様から信頼され、委任されているからこそ、建築士法に定められた「設計業務」以外の業務、即ち現場調査、模型・CG作成、役所協議、確認申請、見積り調整、施工業者選定補助なども、全てボランティアで行うことができるのです。そして、設計と施工が分離した立場にあるからこそ、100%お施主様の味方となって厳しくコスト管理・現場監理ができるのです。


最高裁判決ではないにせよ、この判決は非常に大きな意味を持ちます。オーダーメイドの建築作りを国が志向していないと宣言してしまった以上、わが国の建築設計は、間違いなく「相談⇒設計」から、「設計⇒相談」へとシフトしていくと思われます。


これは私が常日頃から考えているシステムにもつながりますが、設計者は土地の条件やお施主さんの要望以前に、デザインのビジョンを持たなければいけないのです。土地の形に合わせて建築の形を決めました、お施主様の要望どおりつくったら予算をオーバーしました、で済む時代は終わったのです。むしろ造りたい設計・建築をプレゼンテーションすることによって、先にデザインが明らかにされ、それに賛同して頂けるお施主様を募る、そのような形のほうがこの先有望ではないか、と。それは設計者にとってもお施主様にとってもハッピーなあり方ではないかと考えています。
by yyaainfo | 2009-12-27 12:32 | Words

大丸心斎橋本館

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年末商戦でにぎわう御堂筋。関西人ならおなじみの風景ですが、この大丸の建物は実は結構有名な建築です。


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この建物の最大の面白さは、踊り場をスキップフロア的に利用した階段室と1階~中2階の吹き抜けだと思います。竣工が1922年ですから、当時としては相当斬新だったんじゃないでしょうか。今でもとても気持ちいい空間です。個人的にもとても思い入れのある建築で、小さい頃、親に連れられて行くたびに、なんかここ面白くて好き、みたいな感覚があったことをよく覚えています。もちろんヴォーリズの事ことなど全く知らなかった訳ですが、今から思えばはじめて「建築体験」をした場所の一つ なのかなあという気もします。


空襲であたり一面焼け野原になった中、このビルだけ残っている写真を見たことがあります。特別頑丈だったからか、ラッキーだったからかよく分かりませんが、 いずれにせよよく残ったものです。その後の保存もとても良好ですし、後から建った隣の村野藤吾設計・旧そごうが先に解体されていることを思えば、とても幸運な建築クンです。


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踊り場のニッチに水のみ場。こういう感覚は今の商業建築にはないですねぇ。まだまだ永く残ってほしい建築です。
by yyaainfo | 2009-12-25 12:39 | Architecture

大阪・奈良を拠点に新築住宅やマンションリノベーション、古民家改修、古ビル再生、店舗の設計を行う一級建築士事務所です。


by 山本嘉寛建蓄設計事務所